Tシャツを何百着と持っていた時期がある。
余りにも際限なく増え収納ができないので、途中からタンスに入りきらないものは後輩や友人にあげるようにし始めた。
というのも、実際によく着ているのは7~8着だからだ。
バンドTシャツやアーティストの友人のTシャツそして、知り合いが運営しているtangtangのTシャツもよく買う。
ポイントは好きな映画や好きなアーティスト、好きな動物や好きなフレーズがプリントされていること。
ついつい欲しくなってしまうのだ。
お気に入りのTシャツをピックアップするなら、まず欠かすことができないのはパグTシャツだ。パグ犬を好きになったのは、アニメがきっかけだった。
当時、「電脳コイル」というNHKのアニメが好きでよく見ていた。 そのアニメには、「でんすけ」という電子の世界の犬が出てくるんだけど、僕もそういう犬と友達になりたいと思い、電子の世界の犬が見えているテイで、「こぶし」と名付けた想像上の犬に話かけたりする遊びをたまにしていた。
そんなある日、ペットショップで、僕の想像の世界の「こぶし」にそっくりなパグ犬と出会う。早速「こぶし」と名付け我が家に迎え入れた。もうかわいくてたまらない。パグ犬いいよね。
peche注) 「電脳コイル」とは、2007年5月12日から12月1日まで、NHK教育テレビにて毎週土曜日18時30分から全26話で放送されたアニメ。 スタジオジブリ作品や『機動戦士ガンダム』シリーズ、『新世紀エヴァンゲリオン』といった作品に携わってきたアニメーター・磯光雄の初監督作品で、現実世界にAR(拡張現実)技術やMR(複合現実)技術が普及した世界の日常を描いた先駆的作品。 作中に登場する「でんすけ」は、パグとフレンチブルドッグのミックス。
パグを飼いだしてからパグのTシャツを集めることにはまってしまった。 そんな時に出会ったのがこのTシャツ。買ったのは2021年頃。確か、パグ好きな僕好みのTシャツがあると、奥さんが古着屋のWEBショップを教えてくれたのがきっかけだった。 ブランドも不明。ロバートなんちゃらという文字が入っているけど一体誰なのだろう・・・。
大学生時代は落語研究会に所属していた。当時の服装はTシャツが多かったかな。 特に大好きだったのは、コント55号のTシャツ。 萩本欽一さんと坂上二郎さんがプリントされていて、欽ちゃんが「なんでそうなるの!」って飛んでいたと思う。 気に入ってよく着ていたので、昔の写真とか結構それで写っていたんじゃないかな。
あと、だいぶ前なのであまり覚えてないんだけど、ライブか落語研究会かで、オリジナルTシャツだかブルゾンだかもつくった記憶もある。 当時はそういうのをつくれるお店が少なかったから、街のTシャツ屋さんでたまたまつくってもらえたんだと思う。
その後、大学の後輩だった今の相方とコンビを組んで、数年後にNHK新人演芸大賞をもらう。ただ、それまでは、オンエアバトルの第一回目から同期のラーメンズたちは呼ばれるんだけど、僕たちは呼ばれない、そんな不遇の時期を過ごしていた。このとき頑張っていたのは単独ライブ。2回目のネタが演芸大賞に繋がっていく。
僕はずっと、いとうせいこうさんやサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんのファンで、ファンのコミュニティの中で花見をしたりワイワイやったりしていた。 大好きな人の元に集まったファン同士、いつの間にか、色々なつながりが自然とできていくのが楽しかった。 今の仲間のほとんどはその時に出会った人たちだ。
曽我部さんの勧めでDJをやり始めた頃、レコード会社の人が「”DJやついいちろう”として、MIX CDを出しませんか?」と声をかけてくれた。 それがDJのアルバムを出したきっかけ。 2~3枚CDを出したとき、また、曽我部さんから「フェスをやってみたら?」と勧められた。 「それもいいかもなあ」って思っていたら、株式会社渋谷テレビジョンという会社から、『渋谷の「O-EAST」、「O-WEST」、「nest」、「O-Crest」、「duo MUSIC EXCHANGE」の5つのライブハウスを使って何かやりませんか』という話をたまたまいただいた。 それが2011年の「YATSUI FESTIVAL!(以下、やついフェス)」の一回目に繋がっていく。 曽我部さんと会場の方からの声かけという二つの偶然が重なったから、僕も「じゃあやってみるか」と思えた。ほんと偶然。それがなかったらやっていなかったかもしれない。
そして、曽我部さんやせいこうさんのコミュニティで知り合ったNONA REEVESさんや、堂島孝平さん、GOING UNDERGROUNDさんとか、レキシさんに声をかけ、やついフェスに演者として出演してもらうことになる。
そして、このころになると、やついフェスの販売Tシャツはもちろんのこと、欲しいTシャツを自分でつくるようになっていく。自分でつくるときは、自分の面白いと思っているものや、はまっているものをモチーフにする事が多かったりする。
人の力って大きい。皆さんの力でフェスが成り立っている。
渋谷には縁がある。僕が芸人としてデビューしたのは渋谷のライブハウスで、やついフェスをはじめたのも渋谷。
渋谷って、新しいことが生まれる街なのかもしれない。
やついフェスは、2022年で11年目、コロナ禍では3年目を迎えることになる。
9年目の時はネット配信でのみの開催を余儀なくされ、10周年の去年は大々的にやりたかったができず、人数を限定した有観客ライブとネット配信を行った。
ネット配信が進んだ世の中になったというのは、僕たちの規模のフェスにとってはよかったともいえる。
色々な挑戦ができるからだ。
事実、ネット配信で初めてやついフェスを見たという人も結構多いはず。
また、やついフェスのファンの人たちの中には、家族ができたり東京から離れたり、この10年でライフスタイルが変化した人も多い。
ネット配信が始まったことで、遠方で生活している人や家庭のある人にも見てもらえるようになった。
ネット配信でのみ開催した2020年、そしてネット配信を軸足に観客を少し入れられた2021年。 コロナ禍3年目の今年は、状況が許されるならば、しっかりと観客を入れネット配信でも楽しめるやついフェスにしていきたい。
やついフェスには、僕が好きだと感じたり、「これからこういうのがくるんじゃないか」と感じさせてくれるアーティストに出演してもらっている。 メインビジュアルを担当するイラストレーターも演者の一人だと考えていて、2020年は、アルドネックスくんというインドネシアのイラストレーターの子に頼んだり、2021年は、一緒にやっているデザイナーの子から作品をみせてもらって太田雄介さんと平井豊果さんに決めた。 今年のメインビジュアルは、我喜屋位瑳務(がきや・いさむ)さん。 かなり前だったと思うけど、SNSでたまたま作品を見て良いなと思い、今回メインビジュアルをお願いした。
そしてつくったTシャツがこれ。 我喜屋さんのメインビジュアルを全面にデザインしたTシャツだ。
やついフェスで大事にしたいのは自由。 自由にも色々ある。選択する自由、変える自由、動く自由。この自由がないと、タイバンのライブになってしまい、僕のやりたいフェスじゃなくなってしまう。僕のやりたいフェスはお祭りだ。 会場ごとにチケット制にすれば運営資金は潤うが、自由がなくなるのでネット配信は無料にし、見たい時に見たいステージを自由に回れるようにした。 運営資金はクラウドファンディングでまかない、これまでに多くの方々に支援いただいた。人の力って大きい。 皆さんのおかげでフェスがなりたっている。
人生のテーマは体験
「芸人、フェスの運営、俳優。本業はどれになるんですか?」と質問されることがあるけど、全部仕事という感じはしていない。 やりたいことをやっているうちにこうなった感じだ。 でも、ベースは、人を楽しませたいというお笑い芸人の部分なんだと思う。 それが全部の活動の基本。
コントなどで人を楽しませるのが芸人のネタ番組だとしたら、おしゃべりでリスナーに楽しんでもらうのがラジオ。 音楽をかけて楽しんでもらうのがDJ、体験としてお客さんに楽しんでもらうのがフェス。 楽しんでほしいというベースは全て同じだ。
特に僕が特別すごいことをやっているとは思っていない。 テレビに出ている芸人さんだって、大食いをやったり、食レポをしたり、マラソンをしたり、ネタ以外のこともしているわけで、僕がフェスをやるのも、芸人が大食いをやるのとそんなに意識として違いはないからだ。
結構アナログな人間である僕にとって、体験するということが、人生ですごく重要なものになっている。人生のテーマと言ってもいい。 生で何かを体験すると、更にやりたいことが見えてくる。 ネット配信って、目で見ながら手は他のことができるし、なかなかコミットがしづらいけど、コミットしているパーセンテージの大きい五感を使った体験は、感動が生まれやすい。 全身を漬からせるぐらいの体験をつくりだせればかなり面白いことが起きると思う。 思えば、芸人やフェスや、DJや俳優などその全てが、僕にわくわくをくれる体験なのだ。
今のマイブームは、登山と旅行。
これからも色々な体験を楽しんでいきたい。
1997年、お笑いコンビ「エレキコミック」結成。2000年にNHK新人演芸大賞(演芸部門)を受賞。
敬愛するミュージシャン・曽我部恵一氏の勧めでDJ活動を始め、2012年からお笑い・ミュージシャン・アイドル・文化人といったジャンルレスの「YATSUI FESTIVAL!」のオーガナイザーも務めている。現在「YATSUI FESTIVAL!」のクラウドファンディングを実施中。他、数々のドラマや映画に出演し、俳優としても活躍している。
「YATSUI FESTIVAL!」について
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